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商品説明: |
夜長堂さんの仕事
「紙モノカタログ」でも大好評な夜長堂さんのモダンJAPAN復刻ペーパーのアイデアは、大正時代の羽裏や、昭和初期の千代紙などからインスピレーションを受けて生み出されます。そして、夜長堂さんが好きで好きでたまらない、もう一つの素材に、1960年から70年代にかけての日本の古着があります。奇抜ながらも妙に粋で、時にロマンティックで、今ならとても考えられない色使いがかえって新鮮だったりするそれらの絵柄は、すでに夜長堂さんの手で多くのペーパーアイテムとなっています。
今のように情報が豊かでなかった当時に、海の向こうの国々にあこがれ、少々背伸びしながらも、めいっぱいの想像を巡らしながら描いたであろう図案が、すでに本家を飛び越した独自の世界観を生み出していることに、驚きと羨ましさを感じてなりません。夜長堂さんが常々おっしゃられるのは、何が売れるかとか、どうしたら好かれるかとかいう発想から生まれたものとは明らかに異質な、その媚びなさが、どうしても好きなのだということ。実は、限りない情報をいつでも得ることができる現代の私たちの方が、よっぽど不自由なのではないかということ。夜長堂さんの仕事は、復刻という作業を行いながら、こうした過去の無名のデザイナーさんたちの仕事を、現代の人々にもっと知ってもらいたいという思いから始まったのです。今回は、膨大な夜長堂さんコレクションの中から、特に倉敷意匠好みの5点を選んで、手ぬぐいを作らさせていただきました。
手ぬぐいの染色は、「注染(ちゅうせん)」と呼ばれる「型染め」の一種で行なわれます。まず、「型染め」とはそもそも何なのかということを、少々くどくなりますがご説明いたします。一般的に絵柄を染めるためには、防染糊(ぼうせんのり)を使います。防染糊は、染まって欲しくないところに塗る(染めの世界では「置く」と言います)糊です。染まって欲しくないところだけに糊を置いて染料の中に浸すと、糊を置いてある部分には、糊の下の生地の部分にまでは染料が染み込んでこないのです。そして、染まった生地を引き出して、水で洗い流すと、糊は溶けてきれいに流れ落ちてしまいます。残った染料部分がちゃんと絵柄になっているという理屈です。つまり、何枚も同じ絵柄の「糊置き」を行なえば、何枚も同じ絵柄の染めが出来上がるというわけです。同じ絵柄の「糊置き」を行なうために使われるのが、絵柄を切り抜いた型紙です。型紙を使った「糊置き」をする染色方法が、「型染め」なのです。
そして、この「浸して」染めるということを、もっと効率よくできないかと明治時代に考案されたのが、「注染」という画期的な手法なのです。反物を手ぬぐいの長さに切る前に、型紙で「糊置」きをしながらジャバラ状に折り返して束ね、上からじょうろで染料を「注ぐ」のです。と同時に20~30枚を重ねた下側からバキュームで吸い込むと染料は一気に染み込んでいきます。多色染めの場合に色と色とが混ざり合わないようにするための注ぎ方や、移染しない洗い方のノウハウもあみ出され、ここはさすが熟練の職人技と言うべきところ。こうした手工芸と大量生産とのちょうど中間的な生産方法で出来上がる手ぬぐいは、夜長堂さんが生み出す復刻ペーパーと非常に近しいものがあるのです。
手づくりの手跡が残りすぎない。しかし、ひとつひとつを比べると、大量生産品では望めない微妙な揺らぎがある。その少しだけの不均一さに、心ひかれてしまうのです。それをなぜ好ましいと感じるのか、言葉で言い表すことはできません。ただ、このニュアンスは、やっぱり町工場ならではの特権ではないかと思います。 |
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