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筒型 コップ S
商品コード:62035-01

※この商品は、2022年11月に価格改定しました

倉敷意匠では、今回、2種類の新しいかたちのコップを作ってもらえることになりました。口辺に向かって反りのある筒型のコップと、剣先コップの切り込みをもう少し柔らかくしたような輪花型のコップです。民藝の選択基準に合うものであるかどうかは疑問ですが、やっぱり石川さんらしさの滲むコップなのではないかと、とても気に入っています。石川さんに、「なんで民藝なのですか?」と聞いてみたことがあります。「ただ小谷先生が僕のすべてなだけなんですよ。」と、即座に答えがかえってきました。もしかしたら、石川さんにとって、民藝の作家であるかどうかということは、どうでも良いことなのかもしれません。けれど、80年前に始まった民藝の最初の精神を引き継ぐということは、こういうことなのではないかと思ったのです。
商品仕様: 約φ7.8×h7.5cm ソーダガラス
※表記のサイズは目安です。実際には±5mm以内の誤差があります。
商品説明: 石川昌浩さんのお名前は以前から知っていたのです。東京や倉敷の民藝館の売店に並べられているガラスのコップやお皿を手に取るたびに、普段使いにはこれくらいの重さが一番しっくりくるなと思っていました。「石川硝子工藝舎・岡山県」と書かれたプライスカードをながめては、いったい地元のどこにある工房なんだろうと思いながらも、すすんで探そうとはしませんでした。民藝の作家さんなんだなと思うと、どうしても気おくれしてしまうのです。何をどうしていいのかまったくわからなかった20代の頃、柳宗悦さんの「茶と美」という本に出会ったことが、民藝を知る最初でした。以来、のめり込むように民藝の著作を求めて、あちこちの古書店を探し回りました。図録の中の初めて見る美しい品々に心躍りましたし、用途に徹したもの作りの中にのみ、美が生まれるという思想に心酔しました。現在のモノに対する自分の好みは、この頃に出来上がったものであることは間違いないでしょう。ところが、年を経るごとにだんだんその理論が窮屈に感じられるようにもなってきたのです。潔癖すぎるうつわと毎日向かい合うのは、かえって苦しかったり、用途に関係のない装飾にも魅力を感じてしまったり、ときにはキャラクターのデザインをもかわいらしいと思うわけです。この3年間で「職人仕事の日本」というカタログを3冊作りました。実際には、職人さんに限らず、デザイナーさんやイラストレーターさん、カメラマンさんにも関わっていただきました。個人作家と呼ばれる方によるものや、工業生産品も掲載しました。出来上がるまでの過程や考え方を基準にしたのではなく、出来上がったものが自分の暮らしの中にあって、自分自身を楽しませるかどうか、そんなわがままな理由だけでモノを選んでしまっていたからです。ですから、個性を売り物にせず、実用にのみ忠実なもの作りを、信念を持ってなさっている民藝の方々には、とても見せられないカタログなのです。

昨年、石川昌浩さんは、築炉10年を迎え、その区切りとなる個展を倉敷で開かれました。ところがなんと、その案内状が倉敷意匠に届いたのです。うれしいやら、びっくりするやらも、おそるおそる電話してみると、「カタログ、けっこう好きですよ。」とおっしゃられるのです。おまけに、ちょうどその年、車で10分ほどのご近所に新しい工房を構えられたばかりだとのことなのです。東京出身の石川さんは、倉敷芸術科学大学の創設年に一期生として入学するため、倉敷にやって来ました。しかしまだ、工芸の道に進み入ることを目指しているわけではなかったのだそうです。そして2年生になった時、倉敷ガラスの創始者である小谷眞三先生の講義に出会うことが、大きな転機となったのです。小谷先生と言えば、すべてのガラス制作がデザイナーと工場の職人による完全分業制だった1960年代に、国内初のスタジオガラス(個人規模の工房でのガラス制作)をスタートさせた、吹きガラス界の第一人者です。倉敷民藝館初代館長の外村吉之介さんに認められ、その名声は民藝運動とともに全国に広められました。そのように偉大なる先生も、当時の石川さんにとっては、ほんとうに人の良い、愛すべきおじいちゃん先生だったのだと言います。無理やり民藝の理論を説くことは決してなく、いつも、作ることの楽しさばかりを教えて下さったのだそうです。何度か、アルバイト先の洋服屋にまで立ち寄ってくれて、「いいねえ、これいいねえ。」とシャツを買って下さったりもしました。石川さんは、70歳間際のそんな小谷先生を見つめながら、自分が同じ年になった時、洋服屋を続けていられるだろうかと考えました。ちょうど、リーバイスのジーンズや、チャンピオンのトレーナーを売りながら、年齢に関わりなく普遍的なモノということに大きな憧れを感じるようになっていた頃です。卒業の時、そんな自分の気持ちを、正直に小谷先生に伝えました。すると、「おまえは、どこに弟子入りするのにも向いていない。自分でやってみろ。」と背中を押して下さったのです。そして、「10年コップを作り続けてみなさい。必ず力になるはずだから。」とおっしゃいました。実際に卒業と同時にガラスの仕事を始めた時、小谷先生以外の誰もが、続けられるわけがないと言いました。ましてや、コップだけでなんてと口を揃えました。「だからこそやってやると思い続けて、10年コップを作ってきました。当然、小谷先生にはまだまだかないません。もっと作り続けていかないと。」日々の暮らしに活躍する「ちゃんと」したコップが作りたいという一心だけで、いまも毎日作り続けられているのです。1日に30個から40個、お盆と正月の休みを除けば本当に毎日です。2002年からは毎年、日本民藝館展に同じコップを出品していて、毎回入選をしています。尊敬する審査員がいらっしゃるからなのだそうですが、いいお医者さんに診てもらうのと同じ感覚のようで、毎年の「健康診断」なのだと、石川さんは言います。
小売価格: ¥2,970
在庫状況: 在庫なし
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底面中央にポンテ跡が残っています。

石川昌浩
1975年 東京都生まれ
1999年 倉敷芸術科学大学ガラス工芸コース卒業。小谷眞三先生に師事。岡山県清音村に共同制作窯を築炉し制作を始める。
2002年 日本民藝館展初出品初入選(以後毎年入選)。
2003年 共同制作窯を解散し「石川硝子工藝舎」と改名。
2005年 国画会展初出品初入選(以後毎年入選)。
2008年 岡山県早島町に工房、本宅ともに移転。