美濃の陶器瓶屋さん。
     
  価格競争の波の中で、どこの焼物の産地へ行っても、なかなか状況は厳しいというのが現実です。ところが、近年の焼酎ブームからの需要で、毎日仕事に追われっぱなしの忙しい陶器瓶屋さんがあります。
それも、古くからの窯業地美濃で代々窯屋を営む家に生まれた現社長の加藤輝利さんで、15代めだというのです。系譜をたどればなんと桃山時代にまでさかのぼることになるらしいのです。
醤油や酒の入った陶器瓶は江戸時代にかなりの数がヨーロッパへ輸出されていたようですから、もしかしたら、憧れのオランダデルフト窯にあるような、たっぷりと白釉が掛かったボトルやポットがここで作れるかもしれないと思ってしまったのです。さっそくお伺いして、図面とオランダ17世紀頃の白釉ポットの写真を見てもらったわけです。研究熱心な加藤さんは、その後何度も試作をくり返してくださって、やっと出来上がったのが、この写真のポットとボトルです。デルフトのとは、ちょっと釉薬の感じが違うのですが、これはこれでとても良いムードだと思います。無地のボトルですから、とろりと柔らかい肌の感じがポイントです。
ツール立てや花入れとして使っても 良いですし、天然コルクの蓋付きも用意しましたので、キャニスターとしてもお使いいただけると思います。
 




ずらりと並ぶ焼酎瓶や酒瓶。空中に浮かぶゴンドラで完全に乾燥するのを待ちます。工場内の窯の熱の有効利用という訳です。
 
  絵付けの終わった瓶は板にのせて乾燥棚に運びます。
結構重いはずですが、「このくらいの数だったらへっちゃらですよ!」
   
   
   
焼酎ボトルに、こうやって手書きで名前を入れるのが普段のお仕事。見事な達筆に感激します。   窯の中の炎を確認するためののぞき穴。直径は5cm程。   釉薬の入ったバケツ。じょうごを使って瓶の中にも釉薬を掛けます。


 
  陶器瓶の白釉がとても良かったので、食器も欲しくなってしまったのです。瓶屋なんだから、お皿は作れないとおっしゃるのを無理やりお願いして、マグカップとお皿を焼いてもらえることになりました。そのうえ、せっかくこの白釉を使うのだったら、お皿の裏側に高台がない古いタイプの焼き方にしたかったのです。普通、器の底には高台があって地面にあたる部分の釉薬は、削り取ってあります。窯の中で溶けた釉薬が他のものにくっついてしまわないようにするためです。高台がなくて、底面にも釉薬が掛かっているということは、何かで持ち上げておかないと焼くことができないということになります。というわけで、「トチ」と呼ばれる豆粒状の耐火土をお皿の下に並べて、その上にお皿をのせて、地面から浮かせた状態で窯に入れるという方法を使いました。陶土は、あえて熱にひずみやすいものを選びましたので、トチとトチのあいだの部分が窯内で下へ垂れて、皿の縁が波打ったようにゆがんでしまいます。これもまたとてもおもしろいので、このまま販売させてもらうことにしたのです。


       
   
重ねるとこんな感じ。瓶の時と同じで、ちょっと黄色っぽいのと白っぽいのがあります。   この豆粒みたいのが「トチ」です。   お皿の裏側。トチを置くところはあらかじめ釉薬を取っておきます。でも、トチが釉薬にあたってくっついた跡が残ったりもします。ご覧のとおり、釉薬のムラ、たれ、きれなどもあります。また、焼き上がりの色が窯内の炎の状態によって写真上のように黄みがかったつや消しになる場合と、下のように光沢のあるオフ白になる場合があります。あらかじめご了承下さい。