倉敷産リネン帆布。
力織機で織られる
昔ながらの
     
コシがあり丈夫で、使い込むほど味の出る帆布(はんぷ)。始まりは古代エジプトにまでさかのぼり、すでにリネン帆布が織られ、船の「帆」として使われていたということです。日本でも、江戸時代には帆船に使われ、江戸と大阪の航路の発展にも重要な役割を果たしました。やがて、明治になると帆布は、鉄道貨物のシートやテント地として大量に生産されるようになり、革などの高級品に比べて安上がりな綿帆布は、酒屋さんのバッグや学生カバンとして、庶民にとってもなじみの深いものとなりました。
その代表的な産地が倉敷市の曽原地域です。岡山県南部に位置する「曽原」という地名は、原野に帆布を干した「帆原」から由来するとも言われています。時代の流れと共にその需要はずいぶん減ってはきましたが、今や倉敷は数少ない帆布の産地として、国内帆布の約70%を生産しています。
ところで、普通の綿布と綿帆布との違いをご存じでしょうか? 地厚の綿織物でも単に太い糸で織っただけなら綿布です。細い綿糸を何本か撚り合わせて織ったものが綿帆布です。だから、とても丈夫で、タワシでごしごし洗うことも出来ます。
今回、オリジナルのリネン帆布を織っていただいた会社は、1933年の創業以来、糸の撚り合わせから製織までの全行程を行う老舗帆布工場です。
1台のシャトル式力織機が、一日8時間フル稼動して織ることができる帆布は、たったの50mほどなのだそうです。それでもこの織機でないと、しっかり目の詰んだ良質の帆布ができないのだそうです。
ジーンズ好きならピンときたと思うのですが、耳付きのヴィンテージデニムを織っていた織機と同一のものです。この昔ながらの力織機は、今では生産が中止されてしまっているたいへん貴重な機械です。ですから、社内のスタッフで修理やパーツ交換をしながら大切に保たれているのです。
今日は工場をお訪ねして、帆布が作られる行程を順番に見せていただきました。


   
原糸を巻いたロールを業界では「チーズ」と呼びます。なるほどという感じ。   今や生産中止となったシャトル式の力織機が60台も並ぶ様子は圧巻。   仕上がった綿帆布の山。






 
1.合糸
  2〜8本の原糸を1本の糸に合わせていく行程です。ロールが終わるごとにすばやく次の糸を手で結んでつなぎます。
 
2.撚糸
  糸に「より」をかけながら巻き直しています。このことで糸の強度が増し、けば立ちにくくなります。
     
 
3.整経(部分整経機)
  「経」はタテの意味。タテ糸を織機用に整えます。
 
4.整経(ドラム)
  1200〜1500本のタテ糸を200〜300本ずつに分けてドラムに巻き取ります。
     
 
5.整経(ビーム)
  さらに、織機にのせるためにビームと呼ばれる巨大なロールに巻き直します。
 
6.製機
  シャトル式力織機にビームをのせ、ヨコ糸をセットして平織りします。ヨコ糸がなくなると、機械を止めないままにロールを交換します。