小田原のろくろ挽きものの歴史は古く、すでに1200年前には箱根山系において木地挽きの技術が確立されていたと言われています。そして、室町時代には、木地挽きされたうつわにうるしを塗るようになり、小田原漆器が始まります。江戸時代には、東海道の往来が盛んになったことと、箱根七湯への湯治客の増加などにともない、実用の漆器をはじめ多くの木製品の需要が急激に高まりました。以来、小田原は多種多様な木製品の産地として高い評価を受け続けています。
堅い広葉樹材を挽くためには、最高の切れ味の刃物が必要になります。そのため、小田原のろくろ木地師は、一人一人が自分で刃物を作ります。鋼を熱して鎚で叩いて伸ばし、折り曲げて焼き入れをして仕上げるのです。樹種が変われば、それに合った刃物に変えないときれいに仕上がらないので、一度に20本以上の刃物を作ってから、やっと仕事に取りかかることになるのだそうです。
倉敷意匠では、桜・なら・ぶな・栗・くるみの5種の材料を使って、お皿やボウルなどのうつわ、それから、お箸立てと小さなフラワーベースも作ってもらいました。どれも、とてもきれいなフォルムに仕上がったのではないかと満足しています。
そして、実際にうつわとして使っていただきやすいように、表面仕上げはウレタン塗装としました。「樹脂 含浸強化」と言うのですが、水や熱にも強く、日常使いにも安心できるように木の内部にまでウレタン樹脂が入り込んでいます。天然オイル仕上げのように使い込むほどに味が出てくるというものではなくなったのですが、そのかわり使い勝手はとても良いものになりました。
注意点は、使用後に長く湯水につけておかないことと、硬いスポンジやたわしで洗わないこと、金属のフォークやナイフといっしょに使わないことです。やはり木ですから、硬いものにぶつかると、表面が傷ついてしまいます。油汚れは、台所用洗剤で洗っていただいて大丈夫です。洗った後は、水気をよく切って直射日光の当たらないところに干して下さい。電子レンジや食器乾燥機でのご使用はできません。
小さいボウルは、ぐいのみや薬味入れに、平ボウルは、お漬け物とかサラダにも、お皿は、パスタなんかにも良いと思います。
 
小田原木地師が作る国産広葉樹のうつわ
 
 
小田原木地師として今年で26年の池谷貞夫さん。近年は、若手の育成にも力を注ぎ、米山浩さんの師匠でもあります。



1. ボウルの材料となるくるみ材です。秋田県で切り出されました
 
2. まずは、長い材をボウル1個分ずつにカットします。
 
木地挽きの行程を見せてもらいました。
若手木地師 米山浩さんの
       
3. 四角くカットし終わった材料です。
 
4. 旋盤でおおまかな形に荒加工します。外側を削ったら、内側もくり抜きます。
 
         
5. 荒加工が終わったボウルです。積み上がった姿がなんだかかっこいい感じ。2週間ほど乾燥室に入れて、その後、最低2ヶ月の自然乾燥が必要です。
 
6. ろくろに固定して、いよいよ実際の形に挽いていきます。ボウルの曲面に合わせて6〜7種類の刃物を使い分けながら削っていきます。
  今回、倉敷意匠のオリジナル木地を挽いて下さるのは、池谷貞夫さんとお弟子さんの米山浩さんです。米山さんは、木工の世界に入って今年で7年目。池谷さんに学びながら、木地師としてスタートしたばかりの若手です。米山さんが木地挽きするボウルが出来上がるまでの全行程を社長の薗部さんが写真に撮って送ってくださったのでご紹介します。
       
7. 手前のくの字型の木の道具は「牛」と言います。左手で刃物の中心を押さえ、右手で牛をテコにしながら刃の位置の操作をします。ほぼボウルの形になってきました。
 
8. まったくのフリーハンドで削られているのに、どれも同じ形に仕上がります。数個作ると手が形を覚えてしまうのだそうです。すごい! この後、表面を研摩し、塗装します。