角南真由子さんの藍染めと墨染め。
Mayuko Sunami
倉敷市生まれ。中学・高校の体育教師を経て、1999年結婚を機に染色の世界へ。天然色の色の良さと着心地の良さを若い人たちに伝えるための取り組みを続けている。
    藍瓶から取り出した糸のかせは、しっかりと空気に触れるようにほぐしながら、手繰るように何度も回す。何気ない仕事に見えるが、水を含んだ糸のかせはびっくりするほど重い。かつて水泳で鍛えた体力がものを言うのだ。


   
  古格ある達筆の看板がかっこいい。   それぞれ中身の濃度が違う藍瓶は休ませながら順番に使う。今日の藍の具合を確認するお母さま。
       
倉敷市は学生服とジーンズに代表される繊維の町として知られています。瀬戸内海を望む風向明媚なその町に80年続く染色工場があります。かつては、納期に追われながら1日に何万メートルもの原反が、ジッカー染色機で染め上がる忙しい工場でした。4代目となる角南浩彦さんは、幼い頃、その様子を見ながら、染め屋にだけは絶対にならないでおこうと決めていたそうです。ところが、アジアからの安い繊維製品が数多く輸入されるようになるにつれて、工場の経営もだんだんときびしいものになってきていたのです。当時、アメリカでデザインの勉強を積んでいた浩彦さんが、日本に帰って実家の染め屋を継ごうと決心したのは、今から10年ほど前のことでした。そして、あまりに急ぎ足で成長してきた繊維産業の推移を振り返り、あえて時代の逆方向へ戻っていこうと、化学染料をすべて捨ててしまうところから再出発が始まりました。そして7年前、天然染料だけにこだわることで新しい道が開けてきた浩彦さんのもとに、真由子さんが嫁がれてきたのでした。体育大学を卒業後、中学・高校の体育教師を勤めてきた真由子さんにとっては、まったく新しい暮らしの始まりです。2人は、もっともっと若い人たちにも天然染めのすばらしさを分かってもらいたいと、アメリカ古着の染め直しという新しい分野にも取り組んでいます。3人の子供さんにも恵まれ、忙しい毎日を送る真由子さんが、時間を縫いながらもこの仕事を続けるのは、「色の魅力に私が引っ張られている」からなのだそうです。「何度やっても、1枚染め上がるごとに新鮮な感動があるんです。」
かねてから、天然の藍染めを使って商品企画をしたいと思っていたところ、やっとめぐり会うことが出来たのが、角南真由子さんだったというわけです。そして、この工場では、藍染めの他に、天然の墨を使った染めもやっていたのです。始めて見るその色は、決して黒色ではなく、まさに墨色なのです。すぐさま藍色と墨色、この2つを使ってのものづくりが始まりました。
 
備前焼きの藍瓶が12個並ぶ。   雨に濡れた路地と創業時から変わらない工場の板壁。   玄関に続く路地。こういうの好きだなあ。
     
   
適度に荒れた庭先。   染め上がって干されている藍色の糸。美しい。   工場の道路に面した窓。鉄格子がすてき。



         
 
いただきました。
染めの手順を見せて
真由子さんに
         
   
1. 最初にしっかり水洗いします。
 
2. 絞り柄を作りますから、くり返し三角に折っていきます。どんな柄になるんでしょう?
 
3. 中央をゴムで縛りました。
         
   
4. 藍瓶の中にそーっと入れていきます。表面に泡がいっぱい出ているのは、藍が元気な証拠なのだそうです。
 
5. 液の中でゆっくりと揉むような感じで。
 
6. 瓶から取り出して、ゴムをほどくときれいな柄ができていました。でも、まだ緑色です。藍は酸化することで藍色に変わっていくのです。
         
   
7. しっかりと空気にふれるようにパタパタとあおいでいます。少し色が濃くなってきているのがわかりますか?
 
8. 冷たい流水で洗い流します。
 
9. 水の中の空気にふれることで、いっきにきれいな藍色に変わりました。